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第五章 日本人と蛙

      昔話と蛙

 カエルが昔話に登場する主な話形をあげてみる。

雨蛙不孝

 昔とても臍まがりな童がいた。
そのうち父は年をとり、死んだら山へ埋めてもらいたいが、わざと反対のことをする童だからと、「川の縁へ埋めてくれ」といって死んだ。
これまで父の言うことをてんで耳に入れなかった童も、今度は言いつけどおり川の縁に墓を作った。
すると雨の降る夜に川の水が増して墓が流れそうになるので気が気でなく「父っァ墓コ流れる」と叫んで歩くという。
その童は死んでカエルに生まれ変わった。  (山形県最上町)
                               

蛙女房

 ある一人者の男の家へ美しい女が泊めてくれとやってきて、幾日たっても帰らずにやがて女房となる。
ある日女房は里帰りする。男は不審に思い後をつけると、女房は山の奥に入り池まで来て飛び込む。
その内、一匹の大蛙の声に合わせてたくさんの蛙が鳴き出したため男は女房が蛙だったと知り、池に石を投げ入れて家へ帰る。
後から女房が戻り、お経の最中に石が飛んで来て和尚が怪我をし、大騒ぎだったと話す。
男が石を投げたのは私だというと、女房は去ってしまう。

蛙報恩

 蛇に飲まれそうになっている蛙を見つけて、多くは父親が娘三人のうちの一人を蛇の嫁にやると約束して蛙を助ける。
末娘が行くことを承諾して針とヒョウタンを持っていき、ヒョウタンを水中に沈めようとしている蛇に針を投げて殺すというもの。
この方法は婆などに化けた蛙に教えられるものもあるが、多くは娘自身の才覚による。蛇を殺した後、多くの場合蛙が姥皮を与え、それが娘の身を守り結果的には幸福なる結婚をもたらすという姥皮型に続いていく。

 「かえる民話研究B3笑う門には福蛙」(藤沢浩憲『かえる通信』かえる友の会)によると、

「『日本昔話通観』の蛙昔話の具体的な数を特定することができた。
全部で1797話、話型別で172話あった。これ以外に、アイヌ民族の蛙昔話(21話)を加えると計1818話となる」
そうである。

この数だけを見ても、いかにカエルが庶民の伝承文学に置いて重要な存在であったかが推測できる。

 庶民と蛙との関わりが直接文学作品に出てくることは少なくても、それらは決して置き去りにされているわけではないのである。